【狂える愛06】
▼ガイ×ルーク
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「――愛してる、ルーク」
ガイの言葉を、ルークは一瞬理解できなかったようだった。
少しの間があって、そして次の瞬間には、顔を湯気が出そうな程に真っ赤にさせていた。
「え……えっ――……ガ、イ?」
耳まで真っ赤に染まっているルークは、目に涙を浮かべてガイを見上げている。その身体は、ふるふると小刻みに震えているようだった。
ガイは、そんなルークにできるだけ優しく微笑んでみせる。
「俺にはお前しかいないんだ。だから、なぁ、もうこんなこと止めにしよう。な?」
言いながら、その頭を優しく撫でてやると、ルークは面白い程に――さっきの暴れ振りがまるで嘘のように、おとなしくなった。
「うん……うん……っ」
真っ赤な顔で涙目になりながら、ルークは小さな子供のように何度も何度もうんうんと頷いている。先程まで憎悪に支配されていた虚ろな瞳は、今はもうガイだけを映し爛々と輝いている。
どうやら止まってくれたようで、ガイはほっと安堵した。
この騒動もこれで終わりかと思えた時、だがそれはナタリアの声によって阻まれた。
「ッ……ルーク、あなた一体どういうおつもりですの!? アッシュだけではなくわたくしまで殺そうとするなんて!」
ショックに傷ついた――しかし憤怒した表情で、ナタリアが詰め寄る。
その瞬間、ガイだけを映す光の宿った瞳から、再び光が消え失せた。
「………」
ギロリと、憎悪に染まったルークの瞳がナタリアへと向けられる。次いで、剣の切っ先が向けられた。そこでようやく、ナタリアは怯んだ。
「……うるさいなぁ、やっぱり殺そうかな」
無表情にそう呟き、ナタリアの方へ歩き出そうとするルークを、ガイは慌てて呼び止める。
今回は一度呼んだだけで素直にガイを見たルークへ、ガイは微笑みの表情を作りながら両手を広げてみせた。
「ルーク、おいで」
「あ……」
抱きしめてやるからこの胸に飛び込んでこい――とでも言うように広げられた両腕を見て、ルークは再び顔を赤らめる。
「あうぅ……ガイ……っ」
するりとルークの手から剣が零れ、そのままゴトンと床に落ちた。
泣き笑いのような表情を浮かべて、ルークはガイの胸に飛び込んでいく。
ルークの手がガイの背中に回り、ぎゅうっと抱きついてくるのを感じながら、ガイは仲間へと目配せした。
呆気に取られていた彼らだったが、ガイの視線の意味は理解したようで、ぎこちなく頷き返す。
「……ルーク、こんなところで立ち話もなんだし、部屋に入ろう」
緋色の頭を撫でながら部屋へと誘導するガイに、ルークは素直に従った。
ガイとルークの2人が室内に入り、その扉がパタンと閉められた瞬間、他の者たちはようやく訪れた平穏に酷く安堵した。
しかし、誰もが扉から目を離せずにいる。
豹変してしまったルークの姿が、今も脳裏に焼き付いていた。
部屋に入ってまずルークをベッドに腰掛けさせ、ガイはその左隣に腰を下ろした。
すぐさまルークの両手が伸びてきて、ガイの首に抱きつくように腕が回される。
「ガイ……」
まるで恋する乙女のように頬を染めたルークが、うっとりとガイの名を呼ぶ。
ガイは強張りそうになる顔を隠し、必死に作り笑いを浮かべた。
そして、己のせいでこんなにも壊れてしまった恋人の望むままに、触れるだけの口付けをそっと落とした。
デレをあんまり表現できませんでした…
どうしようもなく病んでて狂ってて常識とか良心とかなくて猟奇的なのに、好きな人の前だと赤面して恥らう乙女になっちゃうヤンデレが好きです。
2011.12.14(Wed)