【キミが居た未来01】
▼ジェイド×ルーク
ルーク逆行もの
*王道からかなりズレた逆行ものです。
*ルークが可哀想な目に合います。
*ジェイドが鬼畜眼鏡です。
*捉え方によってはBAD ENDです。BAD ENDじゃなくなりそうです。
さわさわと、風が頬を撫でていくのをルークは感じた。
草と土の湿った匂いと、海の塩の香り。手には冷たい草の感触。遠くで潮騒の音がする。
そっと瞳を開けば、透き通った青空が目の前に広がっていた。
ルークは、起き上がって辺りを見回す。
そこには一面のセレニアの花畑があった。その向こうでは、青い海が地平線で空と混ざり合っている。
それは、まるで天国のように美しい光景だったが、ルークはこの場所に見覚えがあった。
――タタル渓谷だ。
(俺……生きてる……?)
ルークは崩壊するエルドラントで、地核へと落ちながらローレライを解放した。そして確かに、音素乖離で光となって消えたはずだ。彼の最期の記憶は、そこで途切れている。
確かめるように自分の両手をまじまじと見たが、どちらも透き通ってはいない。血の通った、温かい、普通の手だった。
ルークの願望は、ようやく確信へと変わる。
(――生きてる。俺は、生きてる……!)
生きていられる。そのことがこんなにも――泣きたくなるくらいに嬉しい。
自分には未来がある。この先があるのだ。
(――ジェイド)
一番最初に思い浮かんだのは、大好きな恋人の顔だった。
その瞬間、一刻も早くジェイドに会いたいという思いで胸が一杯になる。そして、ルークのことを待っているかの人に伝えたかった。
“ただいま”と――
(約束……守れたよ、ジェイド)
あれは、形だけの約束で終わるはずだった。ルークも、ジェイドも、他の者達も、心のどこかでルークはもう帰らないと思っていた。
しかし何の奇跡か、ルークは今こうして生きている。約束は無事に果たされたのだ。
(……とりあえず、グランコクマに行こう)
もしも戻って来れたら、ジェイドにまず先に会いに行くと、ルークはあの恋人と約束していた。
ルークは立ち上がると、軽やかな足取りで渓谷を降りていく。
この時のルークは、これから訪れる明るい未来を、信じて疑わなかった。
***
ルークは休む間も惜しんで、ただひたすらグランコクマを目指した。
ようやく目的地に着いた時には、既に疲労でクタクタだったが、ルークは今にも倒れそうな四肢を叱咤してグランコクマ城へと向かう。
もうすぐジェイドに会える――その想いだけが、今のルークを突き動かしていた。
「――そこのお前、止まれ!」
宮殿へと入ろうとするルークを、見張りの兵士達が呼び止めた。そして、行く手を阻むように、ルークの目の前で兵士達は手にしている槍を交差する。
「この先は王城だ。許可の無い者の立ち入りは禁じられている」
「あ……俺、は……ルーク――ルーク・フォン・ファブレ」
「……ファブレ……だと?」
ルークの名を聞いた兵士が、怪訝な顔をしてルークの顔を不躾に見つめてきた。ルークはどうしてそんな風に見られるのか分からず、居心地悪そうに顔を強張らせる。
兵士は、先程よりも厳しい表情で、ルークに問うた。
「この宮殿に何用だ?」
「えっと……ジェイド――ジェイド・カーティス大佐に会いたいんだけど……」
正直に答えれば、兵士は益々胡散臭そうにルークを睨む。
「……お前は、キムラスカの者だな?」
「? そうだけど……」
ルークがそう答えた途端、突然兵士達はルークの腕を背中でひねり上げて拘束した。
「なっ……!? 何すんだよ!!」
「黙れ! キムラスカ人が大佐に何の用だ!」
「お、俺はただジェイドに会いに来ただけだ!」
「怪しい奴め、連行しろ!」
「や、やめろ! 俺は不審者じゃない!」
ルークの叫びも虚しく、兵士達はまったく聞く耳を持たずに、抵抗するルークを引きずるようにして宮殿の中へと向かう。
ルークは何とか拘束から逃れようと藻掻いたが、兵士2人がかりで両腕をガッチリと掴まれていて、身動きが取れなかった。
そうしてあっという間に、ルークは宮殿内の地下牢へと放り込まれる。勢いよく突き飛ばされたせいで、ルークは冷たい石造りの床に転がった。急いで身を起こしたルークが牢の出口を見やると、既に施錠を済ませた兵士達が地下牢から出て行くところだった。
「ま、待てよ! 出してくれ! ジェイドに会わせてくれよ……!!」
鉄格子を掴んで前後に揺すってみても、頑丈なそれはビクともしない。
とうとう、兵士達はルークを振り向くことなく行ってしまった。
「なんで……こんな……」
なぜ自分が捕まったのか、ルークには理解できなかった。前に城を訪れた時は、こんなことにはならなかったのに。
「……はぁ」
溜め息をひとつ吐いて、ルークはおとなしく牢に備え付けられている硬いベッドに腰掛けた。今は、ジタバタしても仕方がない。
(きっと何かの手違いだろうし……ジェイドに話が伝われば、すぐに出してくれるよな)
ごろんとベッドに横になり、目を閉じる。
寝る間も惜しんでグランコクマを目指したせいで、今になってどっと疲れが押し寄せてきた。
ジェイドが来るまで少し眠ろう――そう思って、ルークは意識を手放した。
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逆行と言って良いのか分からない程に、王道な逆行展開を裏切っていきます(;´・ω・)
でもその内、王道な逆行も書きたいです←
2011.12.18(Sun)