【始まりを告げるプレリュード】
▼ジェイド×ルーク
学パロ(not現代パロ)
――王立バチカル学園。
それは、キムラスカ・ランバルディア王国の首都バチカルに在る、裕福な貴族の子息女達の通う、初等部から高等部まで一貫の名門校だ。
そんな学園に、ある一人の男が新しい教師として赴任して来た。
亜麻色の髪を肩にかかる程に伸ばし、真紅の瞳に力強い意志を宿らせた、眼鏡をかけた年齢不詳のその男は、名をジェイド・カーティスと言う。彼は、キムラスカの同盟国――マルクト帝国の出身で、マルクトでは知らぬ者の居ない程、名の通った教職者である。
そんな彼がキムラスカにやって来た理由は、キムラスカ国王直々に“あること”を頼まれたからだ。
その頼みとは、キムラスカの第三王位継承者であり次期国王でもあるファブレ公爵家子息――ルーク・フォン・ファブレの更生だった。
ジェイドが担任を受け持つことになったのは、前年度高等部に入ってきて、今学期に二年に進級したばかりのクラスの内のひとつだった。
そしてこのクラスこそが、学園一の問題児であり、ジェイドが更生させることを頼まれた次期国王――ルーク・フォン・ファブレの在席するクラスである。
教壇に立ち出欠を取りながら、ジェイドはぐるりと教室内を見回した。
生徒達は皆、新しい教師に興味津々といった様子でジェイドを見ている。だがその中に、キムラスカ王族の証である赤い髪の男子を見つけることはできなかった。
どうやら、ルーク・フォン・ファブレはまだ来ていないようだ。
(新学期早々遅刻ですか……)
やれやれと思いつつも、実のところ、この状況はジェイドの予想通りだった。
今回の相手は、わざわざ国外からジェイドを呼び寄せる程の問題児なのだ。そんな生徒が、時間通りに登校してくる訳がない。
「……居ないのは、ルーク・フォン・ファブレだけですね。欠席の連絡もないので遅刻でしょうか」
誰に言うでもなくそう呟けば、金髪の女生徒が申し訳なさそうな顔で頷いた。
「ルークはただの寝坊ですわ。アッシュがそうおっしゃってましたから……」
溜め息交じりにそう言ったのは、キムラスカの王女――ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディアだった。
ジェイドの記憶が正しければ、ナタリア王女はルークの婚約者である。彼女の表情がどこか気落ちしているように見えるのは、未来の夫の不甲斐なさに呆れているせいなのかもしれない。
そして、彼女の言葉に含まれていた“アッシュ”という人物は、恐らくルークの双子の弟であるアッシュ・フォン・ファブレのことだろう。
学園の方針で、原則的に双子は違うクラスに割り当てられる。それ故、このクラスにアッシュの姿はないが、人づてに聞いた話では、容姿こそ似ているがそれ以外は正反対な兄弟らしい。
学園一の問題児である兄のルークとは打って変わって、弟のアッシュは絵に描いたような優等生で、今年度からは生徒会長も務めているとか。一卵性の双子で、育った環境もそれほど差はないだろうに、どうしてこうも違うのか――甚だ疑問である。
そんなことを考えつつ、ジェイドはパタンと名簿を閉じた。
そして、ホームルームを終わらせにかかった時――突然、教室のドアが勢いよく開いた。
「やっべ~! 遅刻遅刻!!」
けたたましい音を立てて教室に入ってきたのは、腰まで届きそうな長い緋い髪の男子だった。
全速力で走ってきたのか、ぜいぜいと肩で息をする彼は、遅れたことに対する詫びも何もないまま足早に自分の席まで向かうと、そのままどかっと腰を下ろす。
そんな男子生徒を見て、ナタリアが深い溜め息をひとつ吐いた。
「ルーク、新学期初日から遅刻だなんて。もう少し王族らしい振る舞いを心がけてくださいまし」
ナタリアがどこか呆れた顔でたしなめると、男子生徒――ルークは、顔を赤らめて怒ったように言い返す。
「うっせーな、しょうがねーだろ! アッシュの奴が起こしてくれなかったんだから! あいつ、一人で先に行っちまいやがって!」
「アッシュは今年度から生徒会長としての仕事があるのですから、もうルークの面倒ばかり見てはいられませんのよ」
「……ふんっ!」
ナタリアの言葉に、ルークはむすっと唇を尖らせてそっぽを向いた。その態度は、どう見ても不貞腐れている。
そんなルークを見ながら、ジェイドはどうしても上がってしまう口角を隠すのに必死だった。
(……いやはや、更生のさせ甲斐のありそうな子ですねぇ)
それが、問題児の更生で名高い教師ジェイド・カーティスと、学園一の問題児でキムラスカ次期国王ルーク・フォン・ファブレの初めての出会いだった。
-Prelude-
始まりを告げるプレリュード
始まりを告げるプレリュード
妄想していた学パロ始めてみました☆ .゜*.
ちなみに長髪ルークです。大使様マジ天使。
レプリカじゃなくて本当にアッシュの双子。
ほのぼの路線で行きたいのですが、シリアスも混ぜる予定です!
基本は1話読み切り、だけど繋がってるっていうシリーズ物にしたいなぁ…
2012.01.12(Thu)