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2011.12.06 サイト開設
【キミが居た未来04】

▼ジェイド×ルーク

▼Back Numbers
01】【02】【03



 ジェイドに連れられるまま、ルークはただ歩いていた。
 目の前が真っ暗になるというのは、きっとこういう状態を指すのだろう。今のルークは、何も考えられなかった――いや、考えたくなかったのだ。思考を停止させなければ、どうにかなってしまいそうで。
 前を歩いていたジェイドが扉の前で立ち止まり、こちらを振り返って何事かを言っている。だが、放心状態のルークの耳には届かない。反応もせずに立ち尽くしていると、ジェイドは扉を開いて中へと入っていった。枷から伸びる鎖に引っ張られるようにして、ルークも後を追う。
 扉を通り抜けると、そこは広い部屋だった。
 部屋の真ん中辺りでジェイドが歩みを止め、それに続き、鎖の長さが許す限り彼から離れた位置で、ルークも立ち止まる。

 その時――突然、鎖を思い切り引っ張られた。

 バランスを崩したルークは、その場に頭から倒れこんだ。痛みに、思わず呻き声が漏れる。
 さすがに驚いて、ルークは我に返った。引っ張った張本人であるジェイドを反射的に見上げれば、そこにはルークを見下ろす冷酷な顔があった。
 ルークがようやく目を合わせたのを認めてから、ジェイドが口を開く。

「陛下の御前です。跪きなさい」

 一瞬、ジェイドが何を言ったのか分からなかった。
 そして、その言葉を理解した途端、目頭がじわりと熱を帯びて、ルークは咄嗟に下を向いた。
 膝をつかせるためだけに、鎖を引かれ転ばされた。いくらルークが放心していたとはいえ、これではあんまりだ。優しさの欠片もないその言動は、ルークの知る彼とはかけ離れている。
 それもそのはず、ジェイドは――この愛しい恋人は、ルークのことを知らないのだ。それどころか、彼はルークのことを得体の知れない侵入者として、敵意を向けている。ジェイドに冷たく睨まれるたびに、ルークの心は耐え難い痛みに悲鳴を上げた。
 あの時、牢で交わした会話が、耳から離れないまま何度も頭の中で繰り返される。


『――今は、何年の……何月何日だ……?』


 ルーク・フォン・ファブレはまだ13歳の少年なのだとジェイドに言われた時、悪寒がざわりとルークの背筋を走った。
 そして、思考のままならない頭で、そう訊ねていた。


『ND2014、ルナリデーカン・イフリート・38の日ですよ』


 返ってきた答えは、ルークを絶望のどん底に叩き落とすには充分すぎる威力を持っていた。
 ――ND2014、ルナリデーカン・イフリート・38の日。
 その日付は、すべてが終わったあの日から、丁度4年前のものだ。

(俺は……過去に……来ちゃった、のか……?)

 違和感は、ずっと感じていた。あの時、兵士に捕らえられた時から。そして、ジェイドに会った瞬間に特に。
 今ならば分かる。ジェイドに感じた違和感の正体が何なのか。
 ここは、4年前の過去なのだ。
 この世界のジェイドは、当然ルークの知っているジェイドよりも若い。それこそが、違和感の正体だった。

(ジェイドはまだ、俺のことを知らないんだ……)

 考えるまでもない、当たり前のことだ。なぜなら、ルークがジェイドに出会ったのは、ND2018なのだから。

 その時、急に首が絞まって、息が詰まる。
 その苦しさが、ぼんやりと考え事をしていたルークの意識を現実へと引き戻した。

「――聞いているのですか?」

 続いて、ジェイドの突き刺すような冷たい声が、耳に届く。
 すっかり上の空で、ルークは周りの話などまるで聞いていなかった。そんなルークの注意を引くために、どうやらジェイドは再び首の枷から伸びる鎖を引っ張ったようだ。否応無しに顔を上げさせられたルークの視界に、不機嫌そうに睨んでくるジェイドの顔が映る。

「うっ……ぐぅ」

 ルークは謝罪の言葉を口にしようとしたが、喉が詰まって喋ることは叶わなかった。息苦しさに、ぎゅっと目を閉じる。

「おいおいジェイド……何もそこまですることはないだろ」

 ピオニーのどこか呆れたような声が、ジェイドをたしなめる。
 そこでようやくルークは、自分がピオニーに謁見をしているのだと気付いた。

「この者があまりにも自分の立場を理解していないようでしたので。陛下のお言葉を無視するなど不敬にも程があります」
「とは言っても、まだ子供じゃないか。怯えて口がきけないんだろう」

 ――だから、その鎖を引くのを止めてやれ。
 ジェイドとは違いどこか優しげなピオニーの声が、そう告げる。
 程なくして、鎖を引く力がなくなり、ルークは詰めていた息を吐き出した。そして、ぎゅっと瞑っていた目をそろそろと開き、目の前の王を見上げる。
 そこには、自分の知っている彼よりも少しだけ若い、ピオニー陛下が居た。まるでルークに大丈夫だとでも言うように、優しい顔で微笑んでいる。

「……さて。ジェイドから報告は受けているが……今一度問おう。お前の名は?」

 ピオニーの真剣な瞳が、真っ直ぐにルークを見つめてくる。
 視界の片隅では、ジェイドが突き刺すような視線をルークにくれていた。嘘をつくな、正直に話せ――ジェイドの鋭い瞳が、確かにそう訴えている。
 ルークは、答えるのを躊躇った。けれど、答えなければならないことは充分理解していたので、おずおずと口を開く。

「……ルーク・フォン・ファブレ」

 ルークが名を告げたその瞬間、ジェイドが不機嫌そうに顔を歪め、盛大な溜め息をついた。
 先ほどまでは優しげな表情をしていたピオニーも、ルークの返答に困ったように顔をしかめている。それはつまり、彼がジェイド同様に、ルークの言うことを信じていないということだ。

「まだそんな戯言を続けるつもりですか?」

 そう言いながら、ジェイドに再び鎖を強く引っ張られ、息が詰まった。

「うそ、じゃ……な、」

 首が絞まって苦しい中、息も絶え絶えにルークは訴える。嘘などついていないと――自分はルークなのだと。何度も、何度も、うわ言のように繰り返した。
 偽りの名を名乗ることは容易い。けれど、真実を話すことを求められている中、嘘をつきたくはなかった。だからこそルークは、頑なに“ルーク”と名乗り続けた。

 ――例えそれが、意味のないことだと知りながらも。



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もっとサクサク進める予定だったのですが、ルークの心理描写を丁寧に書こうと思ったらちっとも進まず…
全然丁寧に書けてませんがね!(´;ω;`)
そして続き楽しみですと言って頂けたので普段よりも早いペースで出来上がりました。ミリは現金で調子の良い人間です←
こんな話になっちゃいましたが…ご期待に添えられたのかが不安です…(;´д`)
ちょいちょい書き直すかもしれません。

2012.01.27(Fri)

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